※ 医療的な助言ではありません。現場で考え、試していることの記録です。 登場人物と場面は、個人が特定できないよう変えてあります。
>> 三日後、同じ言葉を使っていた
会議で提案を出したら、五分で潰されました。
「前にやって、うまくいかんかったやろ」
「うちにはまだ早い」
反論できませんでした。どちらも事実だからです。
その三日後のことです。
若手「新しいやり方を試したいんですが」
わたし「それ、前にやってうまくいかんかったで」
若手「……そうですか」
言い終わってから、気づきました。
同じ言葉を、同じ顔で使っていました。
その晩、野球を見ているじいさんに、この話をしました。
じいさんは画面に向かって文句を言っています。
じい「なんでここで代えるんじゃ。分からん監督じゃ」
わたし「じいさん、野球やったことないやろ」
じい「ないな」
>> 潰す側には、悪気がない
コーチングの世界に ドリームキラー という言葉があります。
他人のゴールを否定する人のことです。
名前が物騒なので誤解されやすいのですが、
悪意のある人のことではありません。
むしろ逆で、たいていは善意です。
- 失敗させたくない
- 傷ついてほしくない
- 現実を教えてやらねば
本気でそう思っています。だから止まりません。
では、なぜ止めたくなるのか。
相手のゴールが、自分のコンフォートゾーンの外にあるからです。
その人が動き出すと、自分のいる世界のほうが揺らぎます。
「今のままでいい」という前提が崩れる。だから、無意識に引き戻そうとする。
そして厄介なことに、ドリームキラーは遠くにいません。
一番近い人がそうなります。上司、同僚、家族。
心配してくれる人ほど、強く止めてきます。
>> 「それは誰の話か」で分ける
わたしがやったのは、否定する前に一拍おいて、
この不安は自分の話か、相手の話か を考えることでした。
やってみて分かったのは、大半が 自分の話 だったということです。
- その技術を自分が知らない
- 失敗したときに自分が責任を取る
- 自分の作った仕組みが否定されたように感じる
どれも、若手の提案の中身とは何の関係もありませんでした。
そこで、線を引きました。
否定していい 「その方法だと、データが壊れる」
→ 相手の話。中身への指摘
否定できない 「俺がその技術を知らん」
→ 自分の話。不安であって指摘ではない>> 通しすぎても、うまくいかない
ただし、これで全部が解決したわけではありません。
本当に無理な提案もありました。
線を引いたことで、今度は「否定してはいけない気がして」通してしまった案件があります。
結果、途中で止まって、若手に無駄な時間を使わせました。
全部を通せばいいわけではない、というのが正直なところです。
それでも、「無理でしょ」と言う前に、それが誰の話か考える。
この一拍だけは、続ける価値があると思っています。
試合が終わりました。じいさんの応援していたほうが負けました。
じい「やっぱりあの采配が悪かった」
わたし「……じいさん」
じい「なんじゃ」
わたし「野球、やったことないんやろ」
じい「ないぞ。じゃが、見とるだけの者にしか見えんこともあるでな」
わたし「……ずるいな」
じい「ずるうないわ。わしは監督に言うとらん。テレビに言うとるだけじゃ」
#マネジメント #中間管理職 #コーチング #組織 #心理学
初出: note
