※ 医療的な助言ではありません。現場で考え、試していることの記録です。 登場人物と場面は、個人が特定できないよう変えてあります。
>> 同じ部屋にいた二人の議事録
同じ会議に出た二人が、まったく違う議事録を持ってきました。
一人は、予算と納期の話ばかり書いています。
もう一人は、技術的な条件ばかり書いています。
読み比べても、同じ会議のものだと分かりません。
わたし「二人とも、同じ部屋におったよな」
若手「おりました」
相棒「同じ話、聞いとったはずやで」
どちらも間違っていませんでした。
どちらも、その場で本当に話された内容です。
その晩、じいさんにこの話をしました。
このごろ耳が遠くなって、三回聞き返されます。
わたし「同じ会議に出たのに、書いてくるもんが違うんや」
じい「え?」
わたし「同じ会議に出たのに、や」
じい「なんの会議じゃ」
わたし「……もうええわ」
じい「わしはな。聞こえとる中から、聞きたいもんだけ拾っとるんじゃ」
>> 脳には、フィルターが付いている
RAS(網様体賦活系)という器官があります。
脳の奥のほうにある、情報のフィルターです。
目や耳から入ってくる情報は、膨大な量になります。
全部を意識に上げていたら、脳は一瞬で破裂します。
そこでRASが、重要なものだけを通し、残りを落としています。
以前このアカウントで書いた スコトーマ(心理的盲点)は、
この裏側の話でした。
- RAS = 何を 通す か
- スコトーマ = 何が 落ちる か
同じ仕組みを、別の側から見ているだけです。
そして肝心なのは、何を「重要」と判定するかです。
これは、その人が今持っている関心やゴールで決まります。
予算の責任を負っている人は、予算の話を拾います。
技術で困っている人は、技術の話を拾います。
同じ部屋にいて、違う会議に出ていたようなものでした。
>> 会議の前に「何を持ち帰るか」を書く
やってみたのは単純なことです。
会議に入る前に、今日これを持ち帰ると一行だけ書いておく。
効きました。
狙ったものは、確実に拾えるようになりました。
以前なら流していた一言が、はっきり耳に残ります。
>> 書いたものしか、拾わなくなった
ところが、ここで問題が起きました。
書いたものしか、拾わなくなったんです。
ある会議で、日程の変更が話に出ていました。
わたしはその日、別のことを持ち帰るつもりで座っていました。
聞き逃していました。議事録に一行もありません。
後で他の人に指摘されて、初めて気づきました。
つまり、こういうことです。
フィルターを設定する
↓
設定したものは、前よりよく拾える
↓
設定しなかったものは、前より落ちる ← ここフィルターを強くすると、その分だけ他が見えなくなる。
得したぶん、必ずどこかを損しています。
そこで今は、書く欄を一つ増やしました。
今日、予想していなかったことは何か
これを空欄のまま持って入り、会議の最後に埋めます。
埋まらない日もありますが、埋まった日はたいてい大事な話です。
じい「……で、なんの話じゃった」
わたし「聞いてなかったんか」
じい「聞いとったが、拾わんかった」
わたし「なんでや」
じい「難しい話は、疲れるでな」
たぶん、これも正しいのだと思います。
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初出: note
